「慎太郎さん…大丈夫?」

「う、うん…大丈夫だ。」

いい年をしたおっさんだというのに、俺は、子供達の姿が見えなくなっても涙が止まらず……
顔が突っ張るほど、泣いてしまった。

考えてみればおかしなものだ。
金兵衛さんのところで、意味も分からず木の実を割らされて、最初に見た時は気味が悪いと思ったのに、いつの間にかそんなあいつらのことがまるで本当の子供みたいに可愛くなって……

こんなに別れが辛くなるのなら、最初から出会いたくなかった…
そんな風に思える程、別れが辛かった。



ゆかりさんのことも美戎には反対された。
でも、俺はまだゆかりさんと離れる決心がつかなくて、無理に連れて来た。
もしも、じじいとばばあが結界を破る方法を知らなかったら、…いや、知っていたとしても、俺は本当のことをゆかりさんに話そうと思ってる。
そして、万一この世界に留まるようなことになったら…
俺はゆかりさんに自分の想いを伝えよう。
多分、応じてはもらえないと思うけど、それでも正直に話して、一緒に子供達を育てようってプロポーズしようと思ってる。



俺にとって、生まれて初めてのプロポーズだ。
まさか、こんな訳の分からない世界で、しかもかっぱ相手に言うとは思ってなかったけど、とにかく今の俺には迷いがない。



(そう…俺は本当の気持ちを素直に伝えるだけだ。)



ふと視線を泳がせると、ゆかりさんはぼんやりとした表情で風景を眺めていた。