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「えーーーっ!やだやだ!
おいらも一緒に行く!」

「おいらも!」

「おいらも!」

「おいらも!」

子供達は目にいっぱい涙を溜めて、俺達をじっとみつめた。



「これこれ。
そんなわがままをいうんじゃありません。
お前たちの父上達には大切なご用事があるのです。」

「いやだ~!おいらたちも一緒に行く~!」

無意味にばたばたしながら泣きわめくでかめに、ゆかりさんの平手が飛んだ。



「でかめ!聞き分けのないことを言うんじゃない!
母ちゃんはおまえをそんな聞き分けのない子に育てた覚えはないぞ!」

でかめは強張った顔をしながらも、そう言われて、必死で泣くのを堪えている。
ゆかりさんの目にも、今にもこぼれ落ちそうな涙が光ってた。



「でかめ……」

思わず、俺はでかめの身体を抱きしめていた。
でかめは泣くのを我慢してるっていうのに、俺はもう顔がぐしゃぐしゃで……


このままこの世界にいようかと本気で思った。
そのくらい、別れが辛かったんだ。
でも…感情に流されてはいけない。
俺の世界では、俺の家族が俺のことを心配し、俺の帰りを待っているんだから。


「また必ず戻って来るから…
それまで良い子でいるんだぞ。」

「と…父ちゃん!!」

ついに我慢の限界が来たのか、でかめが大きな声で泣き出し、それにつられて他の三人も同じように泣き出した。



「さ、皆さん…
そろそろ、かごに……」

「は、はい。
では、長兵衛さん…子供達のこと、どうぞよろしくお願いします。」

長兵衛さんは子供達の手を握り、穏やかに頷いた。



俺達は大きなかごに乗り込んだ。
布よりは載りやすかろうということで、村のヨウカイが作ってくれたものだ。
その四隅を飛び天狗達が持って、四人が一斉に羽ばたくと、空にふわりと舞い上がる。



「父ちゃーーーん!」

「母ちゃーーん!」

懸命に手を振る子供達に、俺も思いっきり手を振った。
子供達の姿が小さくなって、見えなくなるまでずっとずっと手を振り続けた。