「ただいま。」

次の日、何の前触れもなく美戎が戻って来た。



「ずいぶん長かったんだな。
もう手伝いは終わったのか?」

「うん、まぁね…」

そう答えた美戎の声にはどことなく元気が感じられなかった。
単に疲れていたのか、それとも……



「慎太郎さん…書庫の本は全部チェックしたけど、結界を破る方法はみつからなかった……」

ゆかりさんや子供達が外に行ってから、美戎は今回の結果を俺に報告した。
予想はしてたけど、やっぱりショックだ。



「そうか……それじゃあ、俺達、もう……」

「戻るのは難しいかもしれないね。
ただ…まだ完全に駄目って決まったわけじゃない。」

「どういうことだ?
何か手があるっていうのか?」

「うん…この世界のことを詳しく知ってるじじいとばばあに聞いてみたら、なにかわかるかもって…」

「じじいとばばあ?」

昨日、コテツさんの話に出て来た奴らだ。
美戎に詳しく話を聞いてみると、なんでもそのじじいとばばあというのは、この世界にひとりずつしかいない貴重なヨウカイで、とにかくこの世界のことを熟知している二人だということだった。



「じゃあ、早速会いに行こう!」

「それが…じじいとばばあが住んでるのはここからうんと離れた場所…金兵衛さんの住む町の傍でね、二人に話を聞けるのは陰陽師だけなんだって。
だから、金兵衛さんに着いて行ってもらって二人に会ったらどうかってことなんだ。」

「そっか…」

「もし、二人から結界を破る方法を聞くことが出来たら、僕達はそのまま戻ることになる。
だから…ここをいつ離れるかは、慎太郎さんの気持ち次第だよ。」

「え…俺の?」

美戎はゆっくりと頷いた。



「でも、早い方が良いかもしれないね。
あんまり長居をすると、ますます子供達やゆかりさんと離れるのが辛くなるんじゃない?」

まさに、美戎の言う通りだった。


(あぁ、どうすれば良いんだ!?)


俺はその辛い決断がなかなか出来ず、頭を抱えた。