「……んたろう!」

「ん?」

「慎太郎!」

「え?」

目を開けると、そこには怖い顔をしたゆかりさんがいた。



「わっ!」

「わ!じゃないだろ。
さっきから何度呼んでると思ってるんだ。
朝めしだ!みんな待ってるんだから、早く来いよ!」

「わ、わかった……」

なんだかよっぽど熟睡してたみたいだ。
俺は慌てて起きて、慌てて顔を洗って、慌てて広間に向かった。



「ご、ごめんな。」

そこには、子供達とゆかりさんがいて、朝ご飯を食べるのを待っててくれた。



「父ちゃん、遅いよ。」

「おいら、お腹ぐーぐーだよ。」

「本当にごめん。
じゃあ、いただこうか。」

俺が席に着くと、子供達はいただきますを言って、すごい勢いでごはんをかきこんだ。



「あれ?美戎は?」

「美戎なら早くから長兵衛さんの手伝いをしている。
なんでも、調べ物の手伝いらしくって、二人とも書庫にこもりっきりだ。」

きっと、壺の結界を解く方法を調べてるんだろう。
美戎の奴…長兵衛さんの邪魔をしなきゃ良いけど……



「他の人達は?」

「もうとっくに食べ終えてる。」

「そ、そうなんだ……」

俺、そんなに寝坊したのか、子供達やゆかりさんには悪いことをした。



「ごめんね、ゆかりさん。
もし、これからもこういうことがあったら先に食べといて。」

「そうはいかない。
子供が親より先に食事を採るなんて、良くないことだ。
しつけはしっかりしないと、ろくな子供に育たないからな。」

子供達のしつけのことまで考えてくれてるゆかりさんに感動した。
しかも、とても古風っていうのか、厳しいしつけだ。
もしかしたら、こっちの世界はこういうしつけが普通なんだろうか?
だったら、俺ももっとしっかりしないといけない。
寝坊なんてもっての他だ。
今まではほとんどゆかりさんと一緒の部屋だったから寝坊することなんてなかったけど、昨夜は美戎と俺で同じ部屋を使ったからな。
美戎が出て行ったのなんて、まったく気付かなかった。