「ねぇ、だったら、ゆかりさんのこともお願いしといた方が良いんじゃない?」

「え…」

「ゆかりさんというのは、あの河童のことですね?」

「は、はい。
ゆかりさんとは旅の途中で知り合って、ボディガードとして着いて来てもらったんですが……
河童も数が少ないんですよね?
ここに来るまでにも、ゆかりさん以外の河童には会ったことがありません。」

「そうでしょうな。
河童は元々この世界のヨウカイではありません。
遥か昔、他所の世界から来た陰陽師が連れて来たのが始まりと言われております。」

「そうだったんですか、それで……」

今の長兵衛さんの話でなんとなくいろんなことがわかったような気がした。
河童は俺達の世界連れて来られたから、数も少ないし、こっちの者達も河童のことを良く知らない。
だから、自然と偏見みたいなものも生まれたんだろう。



(……ん?)



俺はあることに気が付いた。
長兵衛さんは、大昔に陰陽師が河童を連れて来たって言った…
じゃ、じゃあ……俺達の世界にも、昔はヨウカイがいたってことなのか!?
確かに、河童の骨とかいうのがどこかのお寺に祀られてるって話は聞いたことがあるけど、でも、それは猿の骨とかいろんな動物の骨を寄せ集めて作ったまがい物だって聞いた。
一体、どうなってるんだ!?



「慎太郎さん、どうかしたの?」

「い、いや…なんでもない。」

こんなこと、美戎に聞いたところでまともな返事が返って来るはずもない。
っていうか、誰に訊いたところでわかるはずがない。

もやもやとはするものの…この話はもう考えないようにしようと思った。