「旅の途中、どこかで、あやつらと同じヨウカイを見かけられましたかな?」

「え…?」

言われてみれば、見たことない。
でかめもあしでかもみみでかもはなでかも、一度も見かけたことはなかった。



「ありません。
そういえば、全く見たことがありません!」

俺がそう言うと、長兵衛さんはにっこりと微笑んだ。



「そうでしょう。
あやつらは絶滅危惧種…良くいえばレアヨウカイですから。」

「あ、あいつらがレア!?」

「ええ、見ての通り、やつらは身体の一部がやたらと大きい。
ですが、それが特に何かの能力を発揮するかといえばそうではありません。
特別な能力は持たない非力なヨウカイです。
どういう経緯であのような者達が現れたのかはわかりませんが、おそらくは突然変異的なことだったのでしょう。
数が少ないこともあり、一時期はもてはやされた時代もあったようですが、そんなブームはすぐに下火となり、今は、木の実として残っているだけです。
それも一体どの程度残っているのかわかりません。
ですから、言ってみればやつらは大切なヨウカイなのです。」

「そうだったんですか……」

考えてもみないことだった。
そういうことなら、なおさら長兵衛さんに預けるのが良いような気がしてきた。
考えすぎかもしれないけど、万一、おかしなコレクターみたいな奴に目を付けられたりしたら、奴らに危険が及ぶかもしれないし。



「長兵衛さん……あいつらのこと、どうぞよろしくお願いします。」

俺は長兵衛さんに深く頭を下げた。
まさに、子供を養子にでも出すような気分だ。



「わかりました。
あやつらのことは私が責任を持って育てますから、ご安心下さい。」

長兵衛さんの優しい笑顔に、俺はじんわりして涙が出そうになるのを懸命に堪えた。