でも、どう考えたって、あいつらをもとの世界に連れて行くことは出来ない。
寂しいけど…辛いけど、それはどうしようもないことなんだ。
だったら、ここで長兵衛さんに預けるのは一番安心なような気もする。
まぁ、人間達との関わりは少なくなるけど、ここにいたらとにかく安全なのは間違いない。
長兵衛さんなら、あいつらのことをきっと可愛がってくれるだろうし…



「慎太郎さん…長兵衛さんもこう言ってくれてるんだし、お願いしたら?」

「う…ん……」


(あ、そうだ…)


「長兵衛さん…子供達のことなんですけど、以前、金兵衛さんが物騒なことを言ったんですよ。
子供達を引き取ってくれるところがあるにはあるけど、引き取ってもらうには、保護者の寿命を代償に引き渡すか、もしくは病気や祟りをもらわなければならない…なんて、ね。
それも、だまされてたんですよね?」

「……いえ、それは本当です。」

「え?」

「ですから、それは本当だと言ったんです。
ヨウカイを一人前に育てるのはそう簡単なことではありませんし、なんでも金で片が付くと思われるのもよくありませんから、そのような規則になったそうです。」

「そ、そ、そうなんですか……」

なんでだよ…
なんで、そんな怖いことをそんな穏やかな顔で答えるんだ。



「ほら、やっぱり大変じゃない。
あの子達は、元の世界には連れてはいけないんだから、長兵衛さんにお任せした方が良いよ。」

「……うん、わかってる。」

頭ではわかってるんだ…
だけど、それなりに長い間一緒にいたから、愛情も感じてるし…そう簡単に「お願いしま~す!」とも言えない。


「そういえば、奴らは、町ではどうでしたか?
人間や他のヨウカイにいじめられたりはしませんでしたかな?
もしくはやたらと見られた…とか……」

「いえ、そういうことはありませんでしたが…」

「そうでしたか、それは良かった。」

「なぜなんです?
あいつら、なにか他のヨウカイと違ってますか……?」

「気付かれませんでしたかな?」

「……何をです?」

長兵衛さんは、くすりと笑い、手元のお茶をゆっくりとすすった。