(畜生……!)



旅に出てからたったの三日目で、老人からもらった金は消え失せた。
俺には、この世界の金の値打ちがわからなかったけど、「こういうもんは持っていても邪魔にはならんじゃろう…」なんて言われたら、それなりの金額だと思うじゃないか。
俺は少しでも節約しようと考えて、宿にも泊まらなかったんだぞ。
食べる物も持ってるもので済ませ、食料がなくなったから、ついさっき食堂に入って、そこで食事をしたらもう全部がなくなったんだ。
料亭なんかじゃないぞ。
どこにでもありそうなぼろっちい食堂だぞ。
そこで、俺は定食を食べて、あいつらには子供用の…そうお子様ランチっぽいものを食べさせて、それでなくなるって……
一体、あの金は俺の世界でいういくらだったんだよ!



……しかし、怒ってばかりもいられない。
金がなくなったら自分でなんとかしないといけないことはわかっていたことだ。
うん、とにかくまずは仕事をみつけよう。
ちょっと働いて路銀を稼ぎ、また少し進んで働けば良いだけのことだ。
俺は自分にそう言い聞かせた。
窮地に陥った時の気持ちの持ちようっていうのはとても大きい。
こういう時こそ、無理やりにでもポジティヴシンキングだ。




「おまえ達……
心配なんていらないからな。
仕事なんか、俺がすぐにみつけてやるから。」

俺は背中に背負ったあいつらに優しく声をかけた。







「こら!泣くな!
もうちょっとだ!
もうちょっとで町に着くから……」



泣きたいのはこっちの方だ。
あれから、俺は町の中で職探しをしたが、元々あまり大きな町ではなかったせいか、どこにも手頃な仕事はなかった。
仕方なく、俺はその先の町を目指して歩きだしたんだけど、町にはなかなか辿り着かない。
そのうちに、あたりは暗くなり、俺も休まず歩いたせいで疲れ果てているところに、あいつらが腹をすかせてぴーぴー泣き出して……
言葉が通じてるのかどうかもわからないけど、俺は懸命にあいつらをなだめながら、重たい足を無理に動かした。