「ほぉ~、それではあなた様がこやつらを……」



しばらくすると、長兵衛さんは俺達に夕食をふるまってくれた。
そこには、なんと、先日のあの飛び天狗達もいて……
奴らは、あんなにばらばらにされたのに、今はすっかり元通りになっていた。
長兵衛さんの計らいで、仲直り(?)はしたものの、やっぱり奴らの顔を見るのはどこか気まずい想いだ。



「いやはや。
あの時は本当に驚きました。
あれほど見事に切り刻まれたヨウカイを見たのは初めてでしたし、しかもそれでいて命はなくしてはいない……
信じられない想いでしたぞ。」

「うん…急所ははずしたからね。」



美戎よ…俺、意味がわからないんだけど……
あんなにばらばらにしといて、急所をはずすとかなんとか、本当に関係あるのか!?
長兵衛さんもどうしてそこに突っ込まないんだよ。



「どう考えてもあんなすごい技を使える者に敵うはずがない。
それに、他のヨウカイ共が飛び天狗と同じような目にあってはいけないと思い、飛び天狗達にあなた方の案内を申付けたのです。
早くにこの近辺から立ち去っていただこうと思いましてな…
まさか、あなた方の目指してた先が私の所だなんて、考えてもおりませんでした。
それにしてもあなた様は、一体、どういった素性のお方で?」

「そんなたいしたことはないよ。
それより、飛び天狗達を元通りに出来た長兵衛さんの方がすごいと思うよ。」

「弟子たちと夜なべして、どうにかこうにか……
あのような大変なことは、もう二度とごめんですな。」



長兵衛さんの傍には、他の飛び天狗とは少し違う身なりをした飛び天狗と鬼のような角をはやした二人のヨウカイが控えていた。
きっと、奴らが弟子なんだと思う。



(あ……そういえば……)



「長兵衛さん、俺に本を託した人…金兵衛さんでしたっけ?
あの人があなたのことを『兄弟子』と呼ばれてましたが、あなた方のご職業は何なんですか?」

「金兵衛からお聞きになられていないのですか?
私は……陰陽師です。」

「お、陰陽師…!?」

俺と美戎は、その意外な答えに驚き、思わず顔を見合わせた。