「お、おい、美戎……
本当に大丈夫なんだろうな?」

俺は美戎に小声で囁いた。



「大丈夫って……何が??」

「何がって、おまえ……」




本当に鈍い奴だ。
この村に着いてから、見かけるのはヨウカイしかいない。
そのせいか、ヨウカイ達の俺達を見る目も冷ややかだ。
明らかに敵意っていうのか、人間を全く信用していない視線だ。



(なんで、美戎はそれに気付かないんだよ…
本当に……ん?……ま、まさか……!?)



俺の脳裏に、突如として恐ろしいことが思い浮かんだ。
もしかして、先日の飛び天狗達が俺達に復讐するために、ここに俺達の探してる兄弟子さんがいると思い込ませて……俺達はまんまと誘い込まれたんじゃあ……


その推測に、俺の全身からは嫌な汗が噴き出した。



(つ、つまり、これは罠…!?)



えらいことだ!
早く何とかしないと…!!



「び、美戎!」

「なぁに?慎太郎さん。
慎太郎さんもお腹減ったの?」

「そ、そうじゃなくてだな……」

すぐ傍には、俺達を運んできた四人の飛び天狗達がいる。
どうすれば、奴らに聞かれないように美戎に話が出来るのか……
いや、こんな時はあほの美戎よりもゆかりさんに話した方が良いのだろうか?
俺の気持ちは焦るばかりで、なかなか良い案は浮かばなかった。



その時、飛び天狗の一人が、唐突に俺達の方を向き、口を開いた。



「あそこが長兵衛先生のお屋敷です。」

飛び天狗が示す先には、立派な門構えの屋敷が建っていた。