「本当に大丈夫なんだろうな?」

「ご安心下さい。
なるべく低空を進みますから……」



次の日の朝、昨夜の飛び天狗達が大きな布を持って現れた。
俺達をそこに乗せて、空を飛んで村まで運ぶと言うんだ。
そうすれば、山を越えるのもあっという間だと言って……
ゆかりさんは、空高くから落とすつもりなじゃないかって心配するし、子供達は怖がるし……でも、早くに村に着けるならそれに越したことはない。
俺達は話し合いの末、ここは飛び天狗達を信じて、運んでもらうことにした。



「じゃあ、行きますよ。」

「わっ…」




じょじょに浮かび上がって行く布……
今日は昨夜より一人増えて、四人の飛び天狗が、布の四隅を掴んで飛んでいる。




「わぁ…風が気持ち良いね。」

「そ、そうだな。」

「わぁ~!良い景色だなぁ!
ほら、慎太郎さん、見てごらんよ!」

「び、美戎!
危ないから動くな!」

はしゃいでるのは美戎一人だ。
子供達は俺やゆかりさんにくっついて、固く目を閉じている。
俺も、内心ひやひやしながら、なんとか目だけは開けて……でも、下は見ないようにしていた。



しばらくすると、子供達は気疲れしすぎたのか、四人とも眠ってしまった。
ゆかりさんもなんだか眠そうな顔をしている。
美戎だけは相変わらず、あたりの風景を楽しんでるようだった。
飛び天狗達の飛び方はとても安定してて、揺れることもほとんどないけど、それでもやっぱり怖いことは怖い。
これがもう少ししっかりした乗り物ならともかく、なんたって布なんだから。



「あ……村だ!
慎太郎さん、村が見えたよ!」

「あそこが我らの村ですよ。」

「えっ!もう着いたのか?」

恐る恐る、美戎の指差す方を見てみると、確かに村らしきものがあった。


ついに来たんだ。
これで、戻れる!
元の世界に戻れるんだ!