「本当においしいね。
どうもありがとね。」

「いえいえ……こちらこそ、こんなうまい料理をいただいて……
ご馳走様です。」



出来上がった料理を、まずは飛び天狗達に食べさせた。
飛び天狗達は、うまいうまいと食べ進めるばかりで、具合が悪そうな様子は少しもなかった。
それでも俺やゆかりさんは用心してたんだけど、美戎はたまらなくなったのか、俺達が止める間もなく料理に手を伸ばし、子供達も同様で……
でも、しばらく経ってもやっぱり何の異変もなくて、それでようやく僕らも安心して……



「あれ?だっていつも食べてるんでしょう?」

「こんなの食べてるのはお頭とその側近の兄貴達だけですよ。」

「俺達下っ端は食料を調達するばかりで、粗末なものしか食べさせてもらえないんです。」

「へぇ、そうなんだ……」

どうやら飛び天狗達は、昔ながらの縦社会らしい。
俺には、飛び天狗達の顔はみな同じに見えるけど、そういえばさっきの五人は今ここにいる三人より上等の衣類を着ていたような気がする。



「もしかして、さっき来たのは兄貴分なのか?」

「ええ、そうです。
飛び天狗五人衆といえば、このあたりでは知らないものがいないくらい有名な兄貴達なんですよ。」

そんな飛び天狗達を、アニメを見た習得した技で倒してしまう美戎って、一体……



「そ、そうか。それで、あの兄貴達は大丈夫だったのか?」

「はい、多分……
長兵衛先生の所へ連れて行きましたから、きっと大丈夫だと思います。」

「長兵衛先生?それって医者なのか?」

「医者でもあり、学者でもあり……
この山を越えた所にある我らの村にいらっしゃる唯一の人間の先生です。」



(この山を越えた先の村……?)



「えっと、この山を越えた所には君達の村の他にも村はあるかい?」

「いえ…この山の麓には我らの村しかありませんが……」

「え…?それじゃあ……」

俺は老人からもらった地図を持って来て、それを飛び天狗達に見せた。



「俺達、ここを目指してるんだけど……」

「これは我らの村ではありませんか。」

「実は、この村にいる兄弟子さんに届け物を頼まれてて……」

「えっ!それではあなた様方は、長兵衛先生のお友達なのですか!?」

俺と話していた一人がそう言うと、飛び天狗達は、一斉に頭を畳にこすりつけた。