「みんな!こっちにおいで!」

ゆかりさんの声に、子供達は怯えた顔で集まった。



「しつこい奴らだ。
仕返しのつもりか?」

今度は三人だ。
皆、手に荷物を抱えている。



俺達が見守る中、ゆっくりと舞い降りた飛び天狗達は、真っ直ぐに美戎に向かって歩いて来た。



(美戎、大丈夫か?
気を抜くなよ。
俺も、少しは加勢するから…)

(大丈夫だよ。
慎太郎さんは、子供達と一緒にいて。)

すごい余裕だ。
どこかイラッとする気持ちを感じながらも、俺は言われた通り、ゆかりさんや子供達のいる場所へ移動した。



三人の飛び天狗は、美戎の少し前で不意に立ち止まり、そして、その場に跪いた。



「先程は、無礼なことを致しました。
ささやかながら、お詫びの品をお持ち致しました。」

「お詫びの…品…?」

「はい、そろそろお腹がすかれる頃かと思いまして、食材を……」

「えっ!本当?」

「美戎!気をつけろ!
毒が仕込まれてるかもしれないぞ!」

ゆかりさんの声が飛んだ。



「め、滅相もない!
そんなことは致しません!」

「美戎!騙されるんじゃないぞ!」

俺もまけじと声をかけた。
さっきのことで美戎が食いしん坊だってことは飛び天狗達もわかってるだろうし、それを見越して罠を仕掛けて来たのかもしれない。



「じゃあ、一緒に食べようよ。
そしたら、毒が入ってるかどうかわかるじゃない。」

「そ、それは構いませんが……」







「新鮮な魚だな。
それに、野菜も。」

「毒があるような魚は混じってない?」

「ないな。
こいつはあんたも食べたことがあるだろう?
ほら、ミマカの家で……」

「そうだったかなぁ?」

ミマカさんの家で食べたってことは、きっと高級魚なんだろう。
そういえば、すっごくおいしい煮つけがあったけど、もしかしたらあの魚なのかもしれない。
ゆかりさんは、手際良く魚をさばいていき、子供達はその様子をじっと見ている。

調理中は念のため、旅人セットデラックスの家に飛び天狗達を閉じ込め、美戎が玄関先で見張ってる。