「まずいっ!飛び天狗だ!」

そう言うと、ゆかりさんは子供達をかばうように身構え、子供達は怯えた表情でその後ろに集まった。



確かに奴らの顔は天狗に似てる。
だけど、身の丈は天狗みたいに大きくないし、まず大きく違うのは背中に翼がついていることだ。
奴らがどこにいたのかわからないけど、どこかから俺達の姿を発見してすぐにやって来たんだろうと思う。



(ゆかりさん…こいつらって強いの?)

俺は、ゆかりさんにそっと耳打ちした。




(もちろんだ。身体は小さいけど、奴らはあの翼を使って大風を巻き起こしたり、他にもいろんな術が使えるんだ。
しかも、動きがすばやいから、とてもじゃないが倒すのは大変だぞ。
それに、奴らは冷酷なことで有名だ。
女だろうが子供だろうが容赦はしない。)

(そ、そうなんだ……)

面倒な奴らに出会ってしまった。
しかも、相手は五人……まずい…とてもまずい状況だ。



「こんなところに人間とは珍しい……」

「しかも、珍しいかっぱとガキのヨウカイ連れだ。」

「その上、のんびりと弁当を食おうとしてやがるぜ。」

その言葉に、飛び天狗達はどっと笑った。



「わかってるなら、そっとしといてよ。
僕、お腹がすいてるんだから……」

ぼそっと呟いた美戎の言葉に、俺は冷や汗が噴き出した。



「……なんだとぉ?」

「確か、今、こいつ、俺達に口答えしたな。」

「あぁ、違えねぇ。」

「そうか…身ぐるみはぐだけで許してやろうと思っていたが、こうなっちゃ、そんなことは言ってられねぇな。」

「今夜はひさしぶりに人間の肉でも食うとするか。」

「ガキとかっぱはデザートだな。」



な、な、なに、怖いこと言ってるんだ……
僕は、服がびっしょりになるほど、おかしな汗をかいていて、身体はガタガタ震えだして……
そんな最中、美戎はその場所から立ち上がりもせず、ゆっくりと弁当の包みを開きだす。
何やってんだ!?
美戎の奴、今の飛び天狗の話を聞いてなかったのか?



「女みてぇな面してる割りには良い度胸してるじゃねぇか。」



「いえ、違うんです!
そいつはちょっとあほなので、現在の状況がよくわかってないんです!」

……と、言いたかったのだけれど、俺はあまりにビビり過ぎて声を出そうとしてもただ口がぱくぱくするだけで、声は全く出なかった。