「良いか、慎太郎はとにかく子供達の傍から離れるんじゃないぞ。」

「う、うん、わかってる。
こいつらのことは俺が守る!」



あれから子供達もずいぶん大きくなった。
ある時、四人が一斉に体調を崩したことがあった。
何も食べずぐったりとして横たわる姿はとても痛々しくて……
俺はどうしたら良いのか、心配するばかりで何も出来なかったのだけど、ゆかりさんはどっしりと構えていて「心配ない」とだけ言った。
だけど、その晩、四人はとても苦しそうで、やっぱり医者のところに連れて行くと言ってたら、子供達は大きな叫び声を上げ、そしたら不意に一回り程身体が大きくなって……
その後は、急に元気になったんだ。
子供のうちは、そういうことが何度かあるらしい。
変化は身体の大きさだけじゃなくて、四人ともずいぶんとしっかり話せるようにもなったし、足腰も強くなったのか走れるようにもなった。
とはいえ、まだまだ子供だ。
人間で言うと、小学生の三、四年生といったところか……
だから、当然、やさぐれヨウカイに出会ったら、ひとたまりもない。



俺としては、美戎に子供達をみさせて、ゆかりさんと俺が戦おうと思ってたんだけど、美戎は自分が戦うと言い張って……
そこで、俺と美戎は腕相撲で勝負をしたら、俺は1秒もかからずに惨敗し、そのせいであいつが戦うことになった。
そういえば、いつか温泉で見たあいつの身体……無駄な脂肪が一切なかった。
腹筋だって割れてたし、へなちょこには見えても意外と力はあるのかもしれない。
ただ、戦いは力だけじゃない。
今までほとんど外にも出たことのない美戎が、いざという時、どのくらい動けるか…だ。
まぁ、俺だって、喧嘩なんて滅多にしたことはないけど、全くないってわけじゃあない。
昔は野球もやってたし、小学生の時には少しだけ剣道だってやっていた。
だから、きっと、俺の方が戦えるとは思うのだけど……



兄弟子の住む村に近づくに連れ、人の姿はどんどん少なくなっていった。
目の前には薄気味の悪い山が続く。



「あっちだね。
あの山の向こう側が目的地だよ。」

「さぁ、行くぞ!」

ゆかりさんの声に気合がこもる。