「……逆にもらうんじゃ。」

「もらう……?」

普通に考えれば、もらうっていうのは悪いことじゃない。
でも、老人の顔を見ていれば、それがきっと良くないものだっていうことはなんとなく感じられた。



「な、何をもらうっていうんです?」

「……不幸じゃ。
災難だったり、病だったり、稀には祟りだったり……人によって何がもらえるかわからんがな……」



老人よ……なぜ、笑う?
笑う所じゃないだろう?



なんてこった……
寿命だの、不幸だの、冗談じゃない!……結局、こいつらを引き取らせる術はないってことじゃないか。



「うがうがうが…」

「な、なんだ!?」



どうしようもなく落ちこんでる時に、足元からおかしな声が聞こえた。



「うがうがうが」
「うがうがうが」



「な、なんだよっ!」

どいつが最初に声を出したのかはわからないが、一匹が声を出したのをきっかけにあとの二匹も同じような声を出し始めた。



「どうやら、腹が減ってるようじゃのう。」

「腹が!?だ、だけど、こいつらがどんなものを食べるかなんて、俺は知らない。」

「まぁ、人間が食べられるものなら一応なんでも食べるが、それだけでは妖怪としての力が備わらん。
一人前の妖怪にならんことには旅立たせることも出来んから、妖怪専用の食べ物も与えた方が良かろうな。」

「えっ!?一人前になれば旅立たせることが出来るんですか?」

「そりゃそうじゃ。
人間だって、大人になれば親元を旅立つことが多かろう?」

「あ、あぁ……」



成人してもう十年以上経つのに、まだ実家住まいの俺としては多少耳が痛かった。
でも、家族とも何のトラブルもないし、部屋だってあるわけだし……
わざわざ家を出て一人で住むなんて、金もかかるし、家事まで自分でやらなきゃならないなんてちょっと困る。



って、そういう気持ちが自立してないってことか……
そんな俺が突然親だなんて……
こいつらのこと、ちゃんと育てられるのか!?