「え……」



ワンピースを差し出した時のゆかりさんの反応は、予想していたものとはずいぶんと違ってた。
ゆかりさんは、ワンピースをじっとみつめたまま、そのまま固まって……



「あれ…?気に入らなかった?」

「……い、いや……そうじゃないんだ。
なんていうか……ちょっとびっくりして……」

ゆかりさんは、ワンピースから目を離さずに焦った様子でそう答えた。



「そう…良かった。
じゃ、着てみてくれる?
サイズが合わなかったら、直してもらわなきゃならないし。」

「え…今か?」

美戎が頷くと、ゆかりさんはおもむろに立ち上がり、部屋を出て行った。



「美戎……ゆかりさん、なんか様子がおかしいな。
やっぱり気に入らなかったんじゃないか?」

「そうかなぁ?あの柄、可愛いと思うんだけど……」

ゆかりさんは部屋を出たきり、なかなか戻ってこなかった。




「おかしいな。
ゆかりさん、いやに遅いじゃないか。」

「僕、見てくるよ。」

美戎が部屋の扉を開けると、そこにはゆかりさんが立っていた。



「あぁ、びっくりした!
……ゆかりさん、すっごく似合うよ!
さ、入って!」

美戎に手を引かれて、部屋に入って来たゆかりさんはずっとうつむいたままで……



「良かった、サイズもぴったりだね。
本当に可愛いよ!」

「あ、あぁ…そうだな。
すごく…似合ってる。」

そんなことをいうのは恥ずかしかったけど、美戎に釣られて俺もそう言った。
ゆかりさんの緑色の肌と、ワンピースの鮮やかな色の花柄は、本当によく合ってたんだ。
その生地を選んだ美戎は、センスが良いんだとあらためてよくわかった。



「……無理すんなよ。」



突然、ゆかりさんが低い声で呟いた。



「え…?」

「こんな可愛い服が、あたいなんかに似合うはずないだろ!
あたいはかっぱなんだぞ!」

きょとんとしてる俺達に大きな声でそう叫ぶと、ゆかりさんは部屋を出て行ってしまった。