「ごちそうさま。あぁ、お腹いっぱいだ。」

美戎はいつものようにありえないほどの料理をたいらげ、満足そうにお腹をさすった。



「ひさしぶりに慎太郎さんの顔を見たせいか、いつもよりたくさん食べちゃったよ。」

無邪気に話す美戎とは裏腹に、ゆかりさんは何も言わずただ黙々と食べている。
俺も、雰囲気上、食べ物を口に運んでるものの、味なんてまるでわからない。
だって……なんて言えば良いんだよ……
その前に、俺が天国にいたことを、ゆかりさんが知ってるかどうかもわからないんだ。



重い足をひきずって宿に戻ると、ちょうど二人に出くわした。
なんでも、昼食を食べに行くところだったとのことで……
誘われるまま、近くの店に食べに行って、今までどこにいたのかという質問も出ないうちに料理が運ばれて来て……



「あ、そ、そっか。
そりゃあ良かった……はは…ははははは。」



俺は、ひきつった笑みを浮かべ、懸命に平静を装った。



「今日はまだ慎太郎さんも疲れてるだろうからゆっくりして……
出発は明日だね。」

「え……お、俺、別に疲れてなんて……」



「……美戎、そんな奴に優しくすることなんてない!」



突然のゆかりさんの大声に、俺の肩はびくんと波打った。



「え……?」

ゆかりさんの瞳の中には怒りの炎がめらめらと燃えていた。
それを見た時、俺ははっきりと確信した。
ゆかりさんは、俺がどこに行ってたかを知ってる…って……



「遊びに行くのは勝手だけどな。
おまえ、子供たちのこと、少しも気にならなかったのか!!」

「そ、それは……」

俺には何も言い返せない。
ゆかりさんがいつもしっかり面倒をみてくれてるから……俺はそれにすっかり甘えて、子供たちのことを思い出すことは一度もなくて、カワイコちゃん達にちやほやされて、鼻の下を伸ばして……



「ご、ごめん!
ゆかりさん…本当に悪かった!!」

「違うだろ!謝るのはあたいじゃなくてこいつらだ!」

「え……あ、あぁ……」

何事が起こったのかと、びっくりしたような顔をして俺をみつめるあしでか達を見ていたら……
心の中にはもやもやと罪悪感が大きく広がり、俺はそれに押しつぶされそうになった。