「……慎太郎……遅いな……」

「まぁ、たまには良いじゃない。
あ、そうだ…ゆかりさんもどこか行きたいところがあるなら行っておいでよ。
子供達の面倒なら僕がみとくから。」

「あたいは行きたい所なんて特にないよ。」

「そうなの…?」

ゆかりさんは、無表情で頷いた。



慎太郎さんはやっぱり帰って来なかった。
僕は、飲むだけ飲んで、楽しい気分で帰って来た。
もう二度と早百合さんを裏切るつもりはなかったから。
慎太郎さんは、最初からずっとくっついてた目の大きな女の子とどこかに行ってしまったから、きっと帰ってこないだろうとは思ってたけど、夕方近くになっても帰って来ないとはどういうことだろう?



「じゃあ、散歩がてらちょっと早めに出て、それから晩御飯を食べようか。」

「その間に慎太郎が帰って来たらどうするんだ?」

「……この調子なら帰ってこないかもしれないよ。
それに、帰ってきてもきっとぐったりしてると思うから……」



僕の話にゆかりさんは俯き、小さな溜息を吐いた。
どうしたんだろう…?
なにか、ゆかりさん…落ち込んでるみたいにも見えるけど…もしかして、ゆかりさん…慎太郎さんのことを……!?
僕、昨夜、天国に行ったことを話しちゃったけど、まずかったかなぁ…?




「ゆかりさん…あの……」

「美戎は、なんでそんなに出来た男なんだ?」

「え……!?」

「だって、普通の男は、慎太郎みたいに女にうつつを抜かしてしまうもんだろ?
わざわざそんな所に行って、ただ飲むだけで帰って来る男なんていないぞ。」

「あ…あぁ…
僕だって、慎太郎さんと同じようなことをしたことがあるんだよ。
でも…それが良くないことだってわかったから……」

「あんた……」

ゆかりさんは、そう言ったっきり、じーっと僕の顔をみつめてた。



「まぁ、とにかく慎太郎さんのことは心配ないから、出かけようよ。」

「……そうだな。じゃ、行くか。」

ゆかりさんはそう言って、すっくと立ち上がった。