(美戎って…あんな女っぽい顔してて、けっこう男らしいよな。
決断力があるって言うのか、迷いがないっていうのか……)



俺はそんなことを考えながら、美戎の少し後を着いて行った。
美戎に引き換え、俺にはまだ迷いがある。
俺の天使と悪魔の間には、まだ決着はついてないんだから。



「あら~…綺麗なお兄さん!」

商店街を抜け、飲み屋の立ち並ぶ一角に足を踏み入れると、女の人が美戎の周りに群がって来るようになった。
女の人とはいっても、けっこう高齢な人が多くて、僕のお母さんくらいの人からおばあちゃんと呼びたくなるような人までいる。



「こちらはお友達かしらね。
うちは、みんな正真正銘の人間だよ。
ヨウカイなんぞ一人もいない!」

「お兄さん、その店は人間は人間でもヨウカイみたいな顔の女ばっかりだよ。
その点、うちはヨウカイもいるけど、べっぴん揃いだよ!」



おばさん達は、俺にまで寄って来て、口々に店の宣伝をし始めた。



「残念だけど、僕達、行く店はもう決まってるんだ。
ごめんね。」



美戎はさくっとそう言って、一人のおばあさんに向かってにっこりと笑った。
おばさん達は、その様子を見ると、不機嫌な顔をして俺達から離れていった。



美戎の奴……いつの間にそんなこと決めたんだ?
って、まだ店も見てないのに、何を基準に決めたんだろう?
まぁ、そのおかげで、見事な程に、俺達の傍には客引きの姿はいなくなったんだけど……



美戎は客引きのおばあさんとなにか楽しそうに話してて、俺はそのあとを黙ってついて行って……



う、うわっ……な、なんだ、これ…!?



着いた先は、ひときわ目立つ、まるで御伽話の竜宮城みたいなけばけばしいお店だった。