「……慎太郎さん……どうかしたの?」

「え…あ…いや、その……そんな店、この町にあるのか?」

「うん、あるみたいだよ。
慎太郎さんが採寸してる間、僕、外を散歩してたんだけど、その時、おばあさんに誘われたもん。」

「えっ!!おばあさんもいるのか!?」

「……そうじゃないよ。
おばあさんは客引きだよ。」

「そ、そうだよな。」



い、いかん!
俺…何、くだらないことを聞いてるんだ。



「じゃ、今から行く?」

「えっ!?い、今からって…こ、こんな遅い時間に……」

「何言ってんの。
夜はこれからじゃない。
じゃあ、行こうか。善は急げってやつだね。」

美戎は、微笑みながら俺の背中をぱんと叩いた。
これは善というよりは、どう考えても悪だろう。




「お、おい、待てよ。」



俺が考えてる間に、美戎はもう部屋を出て行って、俺は焦ってそれに続いた。



遅いとは言っても、まだ眠くなるほどの時間じゃないから、外にはまだそこそこの人通りがあった。
でも、ほとんどは男の人だ。
ちょっと酔っぱらってるような人もいる。
美戎は特に何も話さず、どんどんと町の奥に進んで行って……



「なぁ、美戎…良いのか?
ゆかりさんに何も言わずに出て来て……」

「大丈夫だよ。
いつもこの時間、ゆかりさんは眠ってるじゃない。」

「そ、そりゃあ、そうだけど……」



美戎は平気な顔でそう言うと、またずんずんと歩き始めた。