「それはそうと、慎太郎さん…
ゆかりさんに服を買ってあげたいんだけど、どう思う?」

「それは良いんじゃないか?
ゆかりさんの服、かなり傷んでるし、きっと喜ぶと思う。」

「だよね…
僕もおじいちゃんに服を買ってもらうまで、ずっと同じ着物着せられてていやだったから、着るもののことは特に気になるんだ。」

「ずっとって……
早百合さんとかいう女の家に行ってからずっとなのか?」

「うん……」



一体、どういうことだろう?
早百合は美戎のことを好きなはず…なのに、そんなことをするなんて……
そうか、わかったぞ!
美戎が逃げないようにだな。
さすがに裸でいさせるわけにはいかないからそんな服…じゃない、着物を着させて…
美戎は見た目にこだわるタイプだから、そんな格好じゃ逃げないって踏んだんだ、きっと。



「ただね、ゆかりさんの身体には甲羅があるから、普通の人間のようにはいかないでしょう?
サイズを計らないといけないんだよねぇ…」

「じゃ、そういえば良いじゃないか。」

「僕は、もう仕上がったものを渡して、ゆかりさんを喜ばせたいんだよ。
サプライズの方が嬉しいじゃない。」

「だったら、どんな体型にも合うように、ぶかぶかにしといたらどうだ?
今ゆかりさんが着てるのもそんな感じじゃないか。」

「だめだよ、そんなの。
格好悪いじゃない。
ゆかりさんだって、きっと気に入ってはないと思うけど、あれしかないから仕方なく着てるんだと思うんだよ。」



美戎の顔はかなり真剣だ。
たかが服のことで…とは思うものの、確かに俺だってすりきれた服はいやだ。
っていうか、こっちに着てからズボンは洗ってないし、上着だってほんの数回しか洗ってないから多少気にはなってたんだ。
……そうだよな。
ゆかりさんは女の子だし、着るもののことが気にならないはずはないよな。



(俺……ゆかりさんがヨウカイだからって、やっぱりどこか軽く見てたのかな?)



罪悪感に似たようなものを俺は感じた。