それにしても、じいちゃんはどうしてそんな大切なことを俺に教えてくれなかったんだろう?
そうだ…もしかしたら、父さんは知ってたのかもしれない。
きっと、なんらかの決まり事みたいなものがあって…たとえば、成人…は、してるよな。
あ、結婚して子孫が出来るまでは話してはいけない…みたいな決まり事があって、それで、父さんは知ってても俺は知らなかったのかもしれないな。
まぁ、話してもらったところで、異世界と通じてる壺だなんて、とても信じられないだろうから、父さんもじいちゃんの戯言だと思って、相手にしなかったのかもしれないな。
でも…だったら、じいちゃんはなんで……
あ、そうか!さては、じいちゃんも壺に興味を持って、こっちの世界に吸い込まれたことがあったりして……!?
いや、でも、あのじいちゃんの気性を考えたら、もしもそんなことがあったら、とても黙ってられないと思うんだけど……



「慎太郎さん、どうかしたの?」

「え…えぇ!?あぁ、まぁ、いろいろとな。」

「いろいろって…?」



面倒臭い……
そう思った俺は咄嗟に……



「えっと、その…ヨウカイの名前はどうなってるのかなって……」

そんなどうでも良いことを口走っていた。



「あぁ、そのことね。
ヨウカイは名前があったりなかったり、好きなように自分達でつけてるらしいよ。
人間との接触が密なヨウカイ程、よく名前をつけてるみたい。」

「……それじゃあ、ゆかりさんは人間となにか深い絆でもあるのか?」

俺は半ば無意識にそんな質問をしていた。




「え…?僕、そんな話は聞いたことないけど……
でも、ヨウカイにしてはやけに人間っぽい名前だよね。」

「そうだよな。
俺もそんな話は聞いてない。
そういえば、ゆかりさんはかっぱだってことにけっこうコンプレックスを持ってるみたいだから、それで、人間に憧れて、人間っぽい名前をつけたんじゃないか?」

「なるほど……」

美戎は俺の推理に、深く頷いた。