「ねぇ、慎太郎さん…
おじいちゃんから、僕の家との関わりについて、なにか聞いたことない?」

「全然ない。
おまえはあるのか?」

「僕もないよ。
……でも、こういうことを知っちゃったら、おじいちゃんがうちに来たのは偶然とは思えないね。」

「どういうことなんだ?」

「だから……おじいちゃんは、慎太郎さんの家と僕の家の秘密を知ってるんだ。
それで、慎太郎さんがこっちの世界に行ったことを知って、僕の家に助けを求めて来たんじゃないのかな?」

「な、なるほど!」



美戎の奴、なかなか賢いことを言うじゃないか。
きっと、その推理は正しい。
そうじゃなきゃ、じいちゃんがわざわざそんな遠くまで行くはずがない。
じいちゃんは、美戎の…いや、美戎の女・早百合の家に目的を持って向かったんだ。
しかし、どういうつながりがあるのかは知らないが、そんな胡散臭い奴らと付き合うっていうのも……
まぁ、この世界にやって来たのが遥か昔ってことだから、長い年月の間にはそりゃあいろんなことがあるだろう。
それにしたって、黒い組織に関わるようなそんな酷い人間になってるとはな……



(……あ)




「美戎…そういえば、この世界に来たのは、妖しを自在に操る者とその友ってことだったよな?
妖しって、ヨウカイのことだろ?
一体、どっちが……」

「安倍川の方だよ。」

美戎は俺が話しきらないうちに、自信満々な顔でそう答えた。



「なんで、そんなことがわかるんだよ。」

「慎太郎さん…安倍川って苗字に聞き覚えはない?」

「安倍川……安倍川なんて、誰も………あ!」

不意に俺の頭に浮かんだのは、大昔の陰陽師・安倍川煎兵衛だった。



「ま、まさか…陰陽師の……」

美戎はゆっくりと頷く。



「な、なんだって~~!!」



じゃあ、俺のご先祖様が安倍川煎兵衛と一緒にこの世界に来たっていうのか!?
だから、じいちゃんのうちにはあんなおかしな壺があって…
じいちゃんは、壺のこともそういう事情も全部知ってたってことか!?
だから、あの蔵に入ることを厳しく禁じてた……?



(あ…そうだ……!)



常々、美戎は、早百合って女にマインドコントロールのようなものをかけられてるじゃないかって思ってたけど、陰陽師の子孫だったら、そういうことは得意そうだ。
まさか、今時陰陽師なんてやってるはずはないが、そういう能力は受け継がれてる可能性はあるもんな。



ここから元の世界に戻ることこともだけど、戻ってからもいろいろと大変そうだ。