「……慎太郎さん?
どうかしたの?顔色がなんだかおかしいよ。」

「ど、どうもしてない。
た…ただ、いくらなんでも10万くらいにはなってるのかって思ってたから……」

「あぁ、それがショックだったんだね。
まぁ、多少は少ないかもしれないけど、その分、あの小屋を貸してもらえたり、くず野菜をもらえたりっていうことがあるからね。
この世界は、ぼくらの世界よりずっと安くで生活出来るから。
でも……それにしたって、計算が合わないよ。
慎太郎さんが稼いだのが10万だとしたら、だいたい4000万って計算になるはずじゃない。」

「……え?」



なんだって??
えっと……
俺の稼いだのが10万として考えてて……
美戎のお金は俺の5倍くらいの量があったから50万として……
でも、その価値は俺のお金の80倍だから……
あ、本当だ!4000万じゃないか!
8000万だなんて、なんで、俺、そんな間違いを……きっと、よほど動転してたんだな。



「あ、えっと……間違えた。
10万じゃなくて20万くらいって思ってたんだ。
それで見積もったから……」

動転して計算間違いをしたっていうのが恥ずかしくて、俺は咄嗟にそんな嘘を吐いていた。
そんな小さい自分自身にちょっとイラッとする。




「なぁんだ、そうだったの。
いくらミマカさんでも8000万なんてくれないし、さすがにそんなにもらったら僕だってすんなりとは受け取らないよ。」

「そ、そうだよな。」

「うん、約2000万円だから心配はいらないよ。」

「そ、そっか。それはよかった。」



頷きながらも、なんだかとてももやもやする。
そりゃあ8000万と2000万じゃ、ずいぶん違う。
でも…2000万だぞ?
1ヶ月、家でぶらぶらしてて2000万……
俺は、まだ夜が明け切らないうちから暗くなるまで一生懸命働いて、たったの5万……




俺は、気持ちが深く沈み込んで行くのを感じた。