「なぁ、美戎……
本当に大丈夫なのか?」


宿の部屋は、俺と美戎が一緒で、ゆかりさんは子供達と一緒だ。
ゆかりさんは、気にすることないって言ったけど、かっぱとはいえ一応女の子なんだし、みんなで一緒にっていうにはちょっと狭い。
それに、美戎と二人で話したいこともあったから。



「大丈夫って…なにが?」

「何がじゃない!
たったの1ヶ月で8000万なんて、売れっ子の芸能人だってそんなにもらわないぞ。
しかも、おまえ、あそこでどんな仕事してたんだ?」

「仕事っていうか~……
いろんな話をしてあげたり、アジュに勉強を教えてあげたり…
そのおかげで、僕もこの世界のことがけっこうわかったんだ。」



なにが勉強だ…
美戎に教えられることがどれだけあるっていうんだ。
小学生の子供でも、美戎よりはきっと利口だろうに。
甘いよなぁ…ミマカさんもその家族も……




「そんなことで、8000万ももらえるはずないだろ!?
俺の稼いだ金みただろ?
早朝から夕方まで汗水たらして畑で働いても、たったあれっぽっちなんだぞ。」

「あれは確かに少ないよね。
でも、そのおかげで、慎太郎さん、余分な脂肪がなくなってスッキリしたんじゃない?
スッキリっていうか、引き締まった感じだよ。
モテそうな体付きになってきたね。」

「そ、そうか?」



一瞬、喜んでしまったが、そんなことで喜んでる場合じゃない。




「まさか、おまえ…
旅が終わったらアジュさんと結婚するとか約束して、もらったんじゃないだろうな。」

「そんなことしないよ。
僕にはさゆりさんがいるんだから。」

「でも……だったら、なんでミマカさんは8000万ものお金を……」

「ねぇ、慎太郎さん……
さっきから8000万、8000万って言ってるけど、何なの、それ?」



これだから、あほは困る。
なんでも説明してやらないとわからないのが煩わしい。



「だ~か~ら~…
おまえがもらったお金を俺達がいた世界の物価みたいなものと照らしあせて大まかに計算してだなぁ…」

「それだったら、そんなにならないよ。
……う~ん、ざっと見積もって2000万くらいかな?」

「2000万って…そんなわけないだろ。
えっと、俺が稼いできたのが……」

「まぁ、5万弱だね。」

「えっっ!!あれだけ働いて、5万弱…?」



知りたくなかったその事実に、俺はへなへなとその場に座り込んでしまいそうな程の脱力感を感じた。