「そのことなら心配しないで。
ミマカさんの所でずいぶん稼いできたから。」

「それはそうだろうけど……」

「毎日宿に泊まって、毎日お腹いっぱい食べても大丈夫なくらい。」

「えっ……」




確か、兄弟子の家までは歩いて二か月くらいかかるって言ってたよな…
しかも、そこから今度は元の世界に帰る方法を聞いて、どこに行かなきゃならないかもわからない。
そりゃあまぁ、俺達の世界に比べたら、宿賃も食費も安いと言えば安いけど、その分、賃金だって安いわけだから……

美戎は自信満々にそういったけど、やっぱりいまひとつ信用出来ない。
って、いくらミマカさんが美戎のことを気に入ってたって、常識的に言って、そんなにお金を払うわけがない。
美戎はあほだから、なにか勘違いをしてるんじゃないだろうか?



美戎は俺がそんなことを考えてることを勘付いたのか、苦笑して、それから、おもむろにかばんの中をごそごそとし始めた。



「……ほら、これ。」

美戎がかばんから取り出したのは、ずっしりと重そうな革袋だった。
俺が農家のおじさんからもらったものより、ずいぶんと大きい。
でも、旅はまだまだ続くんだから、そのくらいじゃ……



美戎は、さらに、革袋の中のお金をテーブルの上にざらざらと広げた。



「なっ!!」



それを見たゆかりさんが、目を大きく見開き、動きを止めた。
そりゃあ、確かに俺がもらったものよりはずっと……あれ?



「美戎……このお金、今までのと違うんじゃ……」

「うん、ミラだからね。」

「……ミラ?」

美戎は、ポケットから見慣れたお金を取り出した。
俺が給料としてもらったのもこのお金だ。



「これは、ソラ。
ミラは、ソラの約80倍の値打ちがあるお金なんだ。」

「へぇ…そういえば、『ソラ』ってよく聞くけど、お金の単位だったんだ……
………ええーーーっっ!!こっちは、ソラの約80倍!?」



俺は、混乱した頭の中を落ち着けるべく、水差しの水を湯呑にそそいで、それを一気に飲み干した。



(落ち着け……落ち着くんだ。
えっと……まぁ、仮に俺がもらった賃金が10万としよう。
袋の大きさは、美戎の方が…う~ん…ざっと見積もって5倍くらい大きいから、10万×5で50万として……
ミラはソラの80倍だから……800…い、いや、違う……は、8000万!?)



俺は、背筋がぶるっと震えるのを感じた。