「なぁ、美戎……毎回、宿屋に泊ってたらお金がかかるじゃないか。
これからは、例のほら…」

「旅人セットデラックスだな?」

横から口をはさんだゆかりさんに俺は頷いた。



隣町までは意外に近くて、俺達はまだ陽が沈まないうちに隣町に着くことが出来た。
俺は当然、旅人セットデラックスのあの小屋に泊まると思ってたんだけど、美戎はさっさと宿に入って行ったんだ。



「大丈夫だよ、心配しないで。
じゃあ、何か食べに行こうか…お腹減ったでしょ?」



小ヨウカイ達は、美戎の言葉に反応して、ぎゃーぎゃーと騒ぎ出した。
奴らはまだしゃべれないものの、なんとなく俺達の言ってる言葉を理解しているようだ。
今日は、少しだけとはいえ歩いたせいで、いつもより腹が減ってるんだろう。







「可愛いね。
みんな、ぐっすり眠ってるね。」

「あんなに歩いたのは初めてだからな。
きっと、疲れたんだろう。」



宿屋の隣の食堂で、俺達は食事をしたんだけど、最近、ミマカさんのおかげでもりもり食べてたせいもあって、小ヨウカイやゆかりさんの食欲はすごいものだった。
そして、それを上回るのが美戎だ。
お店の人も、目を丸くしていたよ。
そんな中、俺だけは食が進まなかった。
いや、腹はすいていた。
だけど、怖いじゃないか。
そんなにたくさん食べたら、一体いくらかかるのかって……
ミマカさんのことだから、きっとずいぶんたくさんくれたんだろうけど、それにしたって毎日こんなことをしていたら、すぐに底をつくぞ。
先はまだ長いんだから、ちゃんと節約しないと……!



金のことばかり言うのもなんだかいやらしいけど、仕事だってすぐにみつかるってわけじゃないんだ。
やっぱりこういうことはちゃんと話しておかないと……



「あ、あのさ、美戎……
これからのこと…っていうか、お金のことなんだけど……」