「え……そ、それは……」



ゆかりさんは、自分からそんなことを言い出したくせにひどく驚いた顔をして……それから、すぐにその顔は困惑した表情に変わった。



静かな沈黙の時が刻一刻と積み重なって…
その度に、俺の心の中の不安は大きく広がっていく。



ゆかりさんが一緒に行ってくれる確率はきっと低い……
今頃になってわかって来たんだけど、きっと、あの時…俺と一緒に行くって言ってくれたのは、きっと美戎が一緒だからだ。
俺は、カンが鈍いからその時はわからなかったけど、今、思い起こせばそう思える。
だって、それまではどんなに頼んでもうんと言わなかったゆかりさんが、美戎が来た途端に行くって言い出したんだから。
俺もなんでその時すぐに気付かなかったんだろう……馬鹿だな。




たとえ、一緒に過ごす時間が長くても、ゆかりさんの目に俺の姿は映ってはいない。
ゆかりさんが想ってるのは美戎のことだけだ。
だけど、その想いが届くことはない。



(なんだか……切ないな……)



「あたい……」



ゆかりさんの口から小さな声が発せられ、
俺は息を飲んで、その声に聞き入った。



「あたい……あんたと……一緒に行くよ。」

「ほ、本当に!?」



ま、まさか、ゆかりさん……
俺とずっと一緒にいるうちに、俺のことを……




「……あぁ……
あんた一人じゃ、あいつら四人の面倒をみるのはとてもじゃないが無理そうだからな。」

「え……あ……そういうこと……」

「……なにがそういうことなんだ?」

「え…あ、な、なんでもない。
で、でも、ありがとう、ゆかりさん!」

「あたいじゃ、たいした戦力にはならないだろうけど、とにかく一緒に行くって約束したからな。
約束は守らなきゃ……」



真面目って言うか、律儀っていうか……
ゆかりさんって、信頼出来る人だなって思った途端、俺の心は熱く震えた。