僕達までがこんなに親切にしてもらえるのは、美戎のおかげだ。
あの日、つくづく思ったんだけど、美戎はあの家族にそりゃあもうものすごく愛されている。
特に、ミマカさんは美戎のことをまるで実の息子みたいに感じてるみたいで、俺達の前で、美戎のことをどれほど褒めちぎったことか。
頭が良いだの、センスが良いだの、性格が良いだの、可愛いだの……
まるで、親ばかの話を聞いてるみたいな気がした。

あの調子じゃ、それなりの路銀が貯まっても、素直に旅立たせてもらえるのかどうか……
ミマカさんは、美戎をアジュさんの婿にでも迎えたいって考えてるんじゃないかなぁ。
まぁ、どうするかは美戎が決めることだから、俺には何とも言えない。
ただ、そうなったら、俺はゆかりさんと二人で旅立つことになるわけだけど、美戎に好意を寄せているゆかりさんは、はたして俺と一緒に行ってくれるんだろうか?
でも、この町に留まっても……
ゆかりさんには申し訳ないけど、おそらく、ゆかりさんの想いは美戎には届かないだろうな。
そのことがわかった時、ゆかりさんはどれほど傷付くことだろう…
あぁ、そんなことを考えたら、なんだかこっちまで気持ちが沈んでくるよ。



「慎太郎……どうかしたのか?」



不意にかけられたゆかりさんの声に、俺ははっと我に返った。



「え…あ、あぁ…べ…別に……」

「ほら、早く食べないと料理が覚めるぞ。」

「あ、そ、そうだね。」

俺は、焦って料理をかきこんだ。



「それはそうと、あと少しでひと月だろ。
美戎は、ミマカさんにすごく気に入られてるみたいだけど、出て来られるのかな?」

やっぱり、ゆかりさんも俺と同じ心配をしていたようだ。



「ねぇ…ゆかりさん……
もしも……もしもの話だけど、美戎がこのままここに残るって言ったら……
ゆかりさんはどうする?」

俺は、聞きたくて聞きたくなかったその質問を口にしていた。