下へと這わせていた舌を鎖骨あたりで止めて、そこに唇を当ててちゅう、ときつく吸いつく。「…んっ、」まるで媚薬みたいに零れる声は俺の脳をトロトロに溶かしてくる。
離せば、映えるように咲いた赤い痕。俺の、って印。独占欲の表れ。たった一つじゃ足りないそれを胸元に唇を何度も落として散らしていく。
そして、タオル越しに胸にキスをする。今までで一番跳ねる蜜の身体。「あ…っ、」と驚きを含んだ声を耳に入れながら、ようやく邪魔なタオルの繋ぎ目に手をかける――
「だ、ダメ…!とーや待って…っ」
「無理」
「…っ、あ、やだ…っ。やだやだ、嫌ぁ…っ」
ここにきて、蜜の拒絶。あれだけ散々煽って、誘うことしておいて今さらなんだよと思う。
普段じゃ絶対にありえないけど、自分のことしか考えられない今の俺はそんな蜜に少しイラついてしまう。
またいつものパターンか、とはぁ、ため息吐いて仕方なしに胸から顔を上げて蜜に目をやれば、すぐにはっと我に返らされる。
ぼろぼろと大粒の涙を目尻から流しながら蜜は泣いていた。なにを思うよりも先に「…っごめん!」口からその言葉が出て、それと一緒にギュッと蜜を抱きしめた俺はそのままごめんを繰り返す。
「ごめん、ごめん蜜…。マジで、ほんとごめん…っ」
「ひっく、とー、や…、」
「ほんとにごめんな…?」
肩に埋めた顔を上げて蜜と見つめ合う。ゆらゆらと涙が溢れてゆれる瞳に映る自分の顔は酷く情けない。
押し寄せる後悔にグッと噛んだ唇から血の味が口内に広がって、できた傷は痛いはずなのに痛くない。
自分が悪いし、言われても当然仕方がない〝嫌〟がぶっ刺さった胸がやっぱりなにと比べても一番痛くて。
ほんとに、ほんとにごめん蜜。
嫌な思いさせてごめん。
怖い思いさせてごめん。