グッ、と握る手に爪が食い込む。理性を保つにはその痛みじゃ全然弱くて、我慢という苦痛に痕が残りそうなほど眉間に皺が寄る。
ミラクルを起こし続けられてる要因は、自分が絶対にと立てた蜜を傷つけないという誓い。その誓いがかろうじて理性を繋ぎ止め、俺は生一本でそれを守り抜く。
これは俺史上最大の死活問題だ。
なのに、蜜は――俺がこれだけ精一杯以上に耐えて、酷く苦悶してるっていうのに、愛しきキューティー怪獣はちっともそれをわかってくれない。気づいてくれない。
「――とーや…っ」
不意に俺と同じシャンプーの匂いが鼻腔を擽った刹那。ギュッと首に回ってきた腕。何度も感じたことのあるよく知った体温が肌に触れる。
え…?と、再び思考は停止する。
だけどすぐに俺は動いた。
なにが起こったのかなんて考えるのも、焦りも戸惑いも、そういった感情全てが追いつく前にちぎれた理性。
この一瞬で今まで耐え続けてきた努力が全部水の泡。必死に守っていたものを俺は一気に捨ててしまった。
最低。その言葉にただ尽きる。
でも、無理だ。こうなれば、一度解き放ってしまったものをそう簡単に取り戻すことはできない。ていうか、なにも考えられない。というより、考えるのを、やめた。
抱きついてきた蜜を息をもつかせぬ早業でベッドに押し倒す。きゃっと零れた小さな悲鳴ごと唇を塞いで、はなから容赦なく貪る俺はただの欲に飢えた獣。
「んっ、あっ、ふぅ…っ、」