妄想より現実。俺の培われた妄想力の賜物だが、いくら脳内の蜜が理想の斜め行くドエロさで頭の中を埋め尽くしてても、一番に考えなきゃいけないのは言うまでもなく現実での蜜、たった一人。
さっきも言ったが、煩悩にまみれたまま蜜を瞳に映してしまえば、俺はもう蜜の顔を二度と見れないことをしてしまうだろう。
わかってる。わかってるんだ。
けーどー…っ!!
「あーっ、もう!!」
蜜のこと宇宙一大切に思っているのに、蜜のために自分の煩悩を消し去れない歯痒さと不甲斐なさに声を上げ、頭をガシガシと掻いた俺はかいていた胡座を解いた足を宙に投げながら身体を後ろに倒す。
バフッ、とベッドに倒れ込むほんのささやかなそのときでさえもすっぽんぽんの蜜は俺から離れない。
むしろ俺と一緒に倒れてきて馬乗りになる蜜。
何本か理性というものがプツッ、と切れた気がした――ところで。
「……とー、や」
か細く、蚊の鳴くような声だったけど、俺の愛しい人が俺を呼ぶ声が鼓膜を擽(くすぐ)った。
部屋の戸が開く音には眼前のアングルが絶景を見るより最高に眺めがよすぎて目が離せなく、全神経をフルに集中させて夢中になっていたから気づかなかった。
だけどそれでも聞き逃さないものが一つ。
全世界、誰よりも可愛いそれにはどんな状況下であれいち早く反応する俺の身体は声が聞こえてきた方に目を向ける。
「は…?」
向けた瞬間、ポロリと、素の状態で口から落ちた言葉は本当にそのままの意味。
予想外とかそういう次元は遥か彼方に超えてしまっている目に映る光景。あまりの出来事に数秒時が止まって、再び時が動き出した俺の身体は未だかつてないスピードでガバッ!!起き上がった。