いつ以来か覚えてないほど久しぶりに鼻血を出して、身体は熱くてもショッキングピンク一色だった頭は鼻血を出した自分に引いて冷めていく。
この年で鼻血って…。
ないわ、ダサすぎるわ。と、あれだけ盛り上がりを見せていたのに今じゃガラリと無の境地。
小鼻を摘み少し下を向いて、ガキの頃上を向くより下を向いた方がいいと教えてもらった応急処置のやり方で治るのを待つ。
救いなのが蜜の前じゃなかったこと。
蜜の前だったら、と考えただけでとりあえず家の近くの川までフルダッシュして橋から飛び降りたい衝動に駆られる。
こんな姿蜜に見られてたらちょっと俺、立ち直れねぇわたぶん…。
つーか、ここで呑気に止まるの待ってる場合じゃねぇよ、俺。
さっさと自分の部屋行くなりしないと蜜が風呂から上がってきちまう。
鼻を摘まんで、手には血をつけて。鼻血が出たってことは一目瞭然。見つかってしまえば蜜は優しいからきっと心配してくれて、でも理由が理由なだけに俺は嘘を吐くか、誤魔化すかのどっちもどっちなそれしかできなくて。
せっかく心配してくれてるのにそんな心苦しいことはしたくない。
「(部屋戻ろ…)」
たぶん、もう止まった。
汚れはキッチンで落として、部屋に戻ったら蜜の姿を見ても蜜とまともに――いつも通りに話せるように気持ちを落ち着かせ、煩悩(蜜の身体)を拭い去るように瞑想に徹底する。
そうしない限り、蜜が家にいるこの間、絶対と断言してもいいぐらい蜜との〝いつも通り〟を過ごせる自信は限りなくゼロ。