ガラッ!

怒りで乱暴に音を立ててなんの躊躇もなく風呂場の扉を開け、凄みを利かせてヤジを飛ばす。

開けた瞬間、外へ逃げるように閉じ込められていた湯気がふわふわと漂い、その湯気の中、シャワーを身体に浴びながら突然の出来事にビクッと肩を跳ねさせ驚いたようにこちらを向いた人物と目が合って――俺の思考は停止した。


「……っとう、や…」


……………え、あ、は…?

なん、で…。


思ってもみなかったことが起こった。予想も想像もするはずがない、今目に映る光景は目を疑ってしまうもの。


だって仕事を上がってから見た携帯には友達から祝いの連絡がきてたけど、着信もLINEも、蜜からは一件だって入ってなかった。

あれだけ一人勝手に妄想して浮かれまくって、祝ってもらう気満々で、だけど結果はマジで完っ璧に誕生日忘れられてて、俺本当にただの超絶バカじゃんって、一方的に思い込んでた自業自得なのにめちゃくちゃショックでさ。

いつもならバイト終わりに欠かさず入れるLINEも勇気なくて。

こんなことならやっぱりダサくてもなんでもいいから明日誕生日だって自己申告しておくべきだったって、アイツ――ドサブ野郎の言うことなんか鵜呑みにするんじゃなかったと恨みの念を燃やしつつ、しました、後悔。そりゃもう全力で。

口から魂をコンニチハさせて、俺、チーン。


心から祝ってくれている店のみんなにもすごく申し訳ないことをした。

祝ってもらえてめちゃくちゃ嬉しく思う心の片隅で〝祝ってくれてるのが蜜だったら〟とか超性格悪い嫌なことを思ってしまって、マジで俺最悪…。

こんな俺のために用意してくれたケーキ(店長の手作り)も、美味しいはずなのに罪悪感で味なんかわからなかった。