ビビビッ、と天然電波を発信し始めた母さんにげんなりする俺は口を一文字に噤む。
口を開けば次はどんな面倒くさいド天然発言がかまされるのかと思うだけで頭が痛くなってくるから黙ることと食べることに専念する。
これ以上面倒くさくなる前にさっさと食って退散しよ…。
「ねぇ、彼女は?彼女には祝ってもらわないの?」
パクパクと無の状態で口の中にパスタを放り込んで減らしていく俺とは反対に、ついに持っていたフォークを置き、セリフを吐くためだけに口を動かす母さんがこれが一番気になるといった様子で食い気味に聞いてくる。
「…さあ。忘れてんじゃねぇの」
淡々とそう答えれば母さんは目をぱちくりと瞬かせ、「…え、飛也の彼女そんなにドライなの?」神妙な面持ちで言うから、「いや、」そこはすぐに否定する。
「俺のことめちゃくちゃ大事に思ってくれてる超いい子。世界一可愛いし。俺も言われて今思い出したぐらいだから、向こうもただ単に忘れてるだけだと思う」
「そうなの?惚気る飛也可愛い。翔織君に報告、」
「ごちそうさま」
「…あっ、待って!まだあたし食べてるじゃん!」
「じゃあさっさと食えよ」
「冷たい!!」
パスタ以外に作ったスープ、サラダも全部食べ終え、手を合わせて席を立とうとする俺。
もちろん面倒くさく(それもかなり)なりそうなことを口にする母さんのセリフはぶっつりと遮って。
そこにすかさず飛んでくるヤジ。
グッと眉間に皺が寄るのを隠すことなく冷たくあしらえば、実年齢よりも幼い顔で母さんはむっとふくれた。