なにか欲しいものある?なんて聞かれても、心が踊らない。わくわくと頭の中に欲しいものをたくさん思い浮かべてたのって小2ぐらいまでだったんじゃねぇの。冷めてんなぁ、俺。

まあ俺が今一番欲しいものは金じゃ買えない。ただ唯一欲しくて欲しくてたまらないもの――それは蜜だけだ。


つーか、

「俺バイトだし」


誕生日どうこう以前にすでに〝バイト〟っていう予定がその日に入ってしまっている。

忘れていたんだからわざわざ休みを取っているはずもなく(覚えてても取ってないだろうけど)、明日は土曜日ということもあり朝から晩までみっちりバイト。


しれっとなにを思うことなくそう言う俺に母さんは「はっ!?」驚いたように声を上げた。


「自分の誕生日にバイト!?嘘でしょ!?」

「嘘じゃねぇし。明日は朝から晩までバイト」

「本当に言ってんの!?ありえない!」


信じらんない、セリフだけじゃなく顔にもそれを浮かべて俺を言葉通りの瞳で見てくる母さん。

そんなに吠えることなのかと、「なにがだよ」母さんとは対照的に冷めた瞳で目をやる俺。


「だって誕生日にバイトって、超寂しいじゃん!」


はぁ…。声を上げてなにを言うかと思ったら、心底どうでもいい理由すぎて呆れを孕んだため息が口から零れる。つーか、また寂しいかよ。

子供みたいなことを言う母さんになんだかどっと疲れがわいてくる。早く帰ってこいよ親父。母さんの相手してくれ。この人、しんどい。疲れる。