現実から目を逸らしているつもりなのか、叫んで両目を手で覆い隠した母さんに思わず笑ってしまう。

ここに親父がいたら〝可愛い〟とか言ってイチャつき出すんだろうな。想像とか気持ち悪いからしないけど。親のそれほど寒いものはない。拒否。


「本当のこと言ってごめんね」


そう言ったらギッ、と目を隠す指の隙間から鋭く睨まれて(怖くない)、「最低。彼女に振られてしまえ」恨みがましくトゲトゲと酷いことを言われた。

だけど残念。俺と蜜は試練を乗り越え(前回参照)超頑丈なクソ強い絆で結ばれてるから死んでも別れることないんだこれが。蜜に愛されまくっている俺はそんなこと言われても痛くも痒くもない。ダメージゼロでごめんよ母上。


「……あ、」


と、突然むすっとして不貞腐れていた母さんが思い出したかのように言葉を紡ぐ。


「そうだ飛也。明日誕生日でしょ」

「え?」

「え?」

「…、」

「…もしかして自分の誕生日忘れてたの?」

「あー…、うん。マジか」


言われて、気づく。

4月22日。俺の18回目の誕生日。


この年になっていちいち自分の誕生日なんか気にすることもなく、昔みたいにみんなに祝ってもらって好きなものを買ってもらえると嬉しくなることもない。

どうでもいい、ていうのが本音。

だから今、このときまですっかり自分の誕生日が明日に迫っていることなんか忘れてて、気づいても思うのが1年早ぇーっていう感想。