次はどんなものがこの目に映るのかと、楽しみでしょうがなくなる。夢中で、時間も忘れて食い入るように一ページ一ページ見てしまうほどおもしろい。


世界をあちこち飛び回り、家を空けがちだけどこの仕事に誇りを持ち、生き甲斐だと豪語する親父のことを本人には死んでも絶対に言わないけど、尊敬している。

すごい、と心の底から思う。


かく言う母さんはテレビ関係――番組制作に関わる仕事をしているらしい。親父と違ってあまり詳しくは知らない。家に帰ってきても仕事の話はしないし。

けど、まあまあ上の地位にはいるみたいで、親父よりかは空けないが数日帰ってこないときも多々ある。

ふわふわと、どこか抜けたところのある天然な母さんが上に立ってバリバリ仕事している姿は想像つかない。働いているときの母さんはすごいと親父は言うが。


「(信じらんねぇ…)」


今、目の前で親父の帰りが今日も遅いということだけで肩を落として子供みたいに寂しそうな表情をする母さんにいい年して…と、呆れを混ぜた瞳を向けてしまう。

こんな母さんが仕事になれば豹変するって…。なんかそれ、俺的にものすっごくホラーなんだけど。


頭の中で思い描いてみた般若の形相で仕事をする母さんを目の前の母さんと照らし合わせながら、「別に帰ってくんだからいいじゃん」サラダを口に運ぶ。うん、ないな。なにがすげぇんだよ親父。


「そうだけどー…。寂しいじゃん?」

「やめろ。息子に言うな。てか、寂しいって年じゃねぇだろ」

「なにをー…、生意気っ!可愛くないっ!年とか言うなバカッ」

「39歳」

「ぎゃー!飛也嫌いっ!現実ぶつけてこないで!!」