俺のツッコミにふふふ、と笑い、いただきますと手を合わせてフォークを持った母さんはパスタをクルクルとそれに巻きつけ、口に運ぶ。俺もそれに続き、手を合わせて食べ始める。
「んーっ!待って、めっちゃ美味しい!!飛也やばっ。天才!!」
「当たり前だろ。誰だと思ってんだよ」
「あたしの愛しい息子〜!兼、ハイスペック主夫」
「うるせぇ。主夫言うな」
「なんで。いつも助かってます、飛也主夫っ」
「……うざっ。つーか、親父は?」
「うざいとはなにさ。感謝してるにー。翔織君は今日もいつも通り遅くなるみたいです…」
そう言ってしゅん、なんて落ち込む母さん。
相変わらず親父のこと好きだな…と思う。
母さんは俺たち(上に兄貴が一人いる)を生んで年を食った今でもご覧の通り親父に超が付くほどべた惚れ。それは親父もまた然りで、まるで付き合いたてのカップルのようにめちゃくちゃ仲がいい。
息子の前で普通にイチャつきだすから、見てるこっちが恥ずかしくなる。
いや、まあ、仲の良さは俺と蜜には断然負けるけど。俺たちに勝てるカップルとかこの世にたぶん200パーセントの確率でいない。
ちなみに翔織(しおり)とは親父の名前だ。
親父は雑誌やテレビにまで取り上げられるほど、その世界じゃ有名なプロカメラマン。ついこの前出した写真集が話題を呼び、飛ぶように売れてるのだとか。
俺も親父のそれを見たけど、売れる理由がわかる。親父が撮る写真は一目見るだけでその世界にばっと引き込まれ、自分がそこに居て、この目で直に見ているかのような錯覚を起こす。