理性には全勝中でも事に進むのには全敗中な俺は悲しく全敗記録を思い出し、またため息吐いてやだと言われればるーるるる、なんて心の中で泣くという恒例行事をしていると。
「…っとー、や、」
後ろから細い涙声が俺を呼ぶ。
すぐに振り向いて目に映した蜜は、身体を起こしてぺたんとベッドに座り、ひくっ、としゃくりながらぼろぼろと大粒の涙を小さい子供みたいに落として泣いていた。
そんな蜜に眉を下げて手を伸ばす俺はとことん甘い。ていうか、甘やかす以外たぶんできないと思う。だって可愛い愛しい。甘やかさなくってどうすんだ。
「なに泣いてんの」
「ごめ、っん、なさいぃ…」
「もー、ほんとにね」
「…っ!!ごっ、ごめ、」
「ふはっ、嘘。いーよ。俺もごめんな?」
閉じ込めた腕の中で俺の冗談をいちいち本気にしてさらに涙を零す蜜の髪をふわふわ、撫でてやる。
数ヶ月前まで胸下まであったハニーブラウンの長かった髪も、なにかの話の流れで俺が短い方が好きだと言ったら蜜は数日後にはバッサリ髪を切っていた。
前髪が目の上で切り揃えられているのは変わらないけど肩の上まで短くなって、えっとなんだっけ。…ああ、そう。ボブ?って髪型にしたらしい。
その辺のことは美容師目指してるわけじゃないし、女でもないからよくわかんねぇけど。とにかく自分の好みだからか髪を切った蜜は長かったときよりもまたさらにめちゃくちゃ可愛くなって、今の髪型が童顔の蜜によく似合ってる。
俺の好みに合わせて切ったってところが嬉しくて、やっぱり最高に可愛かった。