眉を下げてお願いをする俺は降参。困ったように微笑んで蜜のご機嫌を窺う俺。
蜜の気持ちを疑ってた、なんて、さっき俺のこと嫌いじゃないのか聞いたときにもう悟られてるかもしれないけど、やっぱり改めて口に出して言いたくない。
きっと、たぶん、蜜は泣く。
キスを拒否したからだ、とか思って、勝手に見当違いに疑っていた俺が最低なのに蜜が悪いって自分を責める。
それは、違うから。蜜はなんも悪くないから、言いたくない。
むっすーっと子供みたいにふくれる蜜が見つめてくる。言い換えるとガン見してくる。
え、ちょ、蜜さん…。
その熱い視線にドキドキする――って、俺。たぶん、いや絶対、これは「じゃあチュウしたら許してあげるっ(きゅるんっの効果音付き)」の部類があとからくる熱視線ではないと思うから期待するな。
この視線の意味はもっとこう――例えるならあれだ、人の顔を見てなにか悪戯を真剣に考えてるときの子供のような眼差し。
うん、ぴったりだ。
と。
そんな(くだらない)ことを思いながら蜜に負けじと熱視線を返していれば、
「……わかった」
にやり、なにやら不敵な笑みを浮かべて瞳をキラーンと輝かせた。