どんなに小さな声だったとしても、蜜の声なら絶対に聞き取るよくできた俺の耳にははっきりとそれは届いた。
バッカ。バカバカバカバカバカ蜜。人一倍泣き虫で照れ屋で恥ずかしがり屋のくせにそんなこと言うなよ。
――俺のこと、嫌いなくせに、そんなこと言うなバカ…ッ。
さっきから煩い心臓の鼓動はさらに煩くなって、かぁ…っと赤くなる顔も蜜に負けず劣らず真っ赤っか。胸が熱くなって、目頭がジーンとする。
目に浮かんできそうな液体がなにかわかっているから、ダメだ。今泣いたらなにも聞けねぇ。抑えるように蜜をきつくきつく抱きしめる。
――ドキン、ドキン
心臓が、煩い。
はーっと吐いた息を助走にして、蜜の耳元で俺の覚悟、不安、わだかまり、全部のもとになっていることを問う。
「――蜜、は、俺のこと嫌いなんじゃないの?」
やっと、聞けた。
出だし少しだけ息詰まって、やっぱ決まらねぇな、なんて苦笑もんだけど、もう情けなくて女々しい男だからそんな小さいこと気にしない。
気になるのは、蜜の返事だけだ。