ふわふわ撫でる蜜の髪から微かに香る甘い洗髪料の匂いに自然と顔が綻ぶ。けど、ダメ。しっかりしろ、俺。
ふーっと小さく息を吐いて、なにもかももう全部覚悟を決めた俺が最初の一文字〝あ〟を言おうと口を開いた瞬間に。
これで二回目。タイミング合いすぎだろとかもうつっこまない。
今回は本当に大事だから、蜜にはかなり温厚な俺でもいい加減にしてと言いたくなってしまう遮りっぷり。
「…っあ、あのねっ!」そう声をあげた蜜になに。と、グッと眉を顰めそうになった俺は――、
「………え?…は!?ちょ、蜜っ、え!?」
ご覧の通りでございます。
「っと、とーや、は、」
「み、みみみ蜜、ちょ、待っ、な、なん…っ」
ドキドキなんか通り越してバクバクと見事に騒がしく荒れる心拍数。え、え、なにコレ、え!?
かぁ…っとそっこうで顔を赤くしてバカみたいに焦る俺をよそに話を始める蜜にちょっと待って!タンマをかけたい俺。
だけどいきなりの展開すぎて頭が上手くついていかず、おまけに舌もついていかなくて。結果、かなりダサい俺を蜜にさらしている始末。
なのに蜜はかなりのゴーイングマイウェイ。
きっとこんなダサい俺は今どうでもよくて、俺に言いたいことの方が大事なんだろう。
ぎゅううううーっと。
さっきまで回ってこなかったのに、いきなり自分から回してきた蜜の細い腕に力が入る。