「蜜は俺とキスしたくねぇの?」
取った彼女の手の指にチュッとわざと音を鳴らして口づける。
たったそれだけのことで彼女――蜜は泳がせていた瞳を俺へと定め、カッと目を見開いて、朱だった頬は真っ赤に色づく。
そんな相変わらずな蜜の反応が可愛くて好きで。愛しい気持ちが底から溢れ出す――が、でも拒んだ理由をうやむやにしてやるようなことはない。そこはきっちり吐いていただくに決まってる。
「…なぁ、蜜…?」
挑発的な瞳で捉えて。理由を吐いてもらうのが一番の目的だが、蜜の反応を楽しみたいっていうのもまた本音。だって超可愛いし。
口づけた指を今度は口へと運び、それを歯でカリッと甘噛みしてやった。
「キス、したくない?」
「んっ…とー、や、やだぁ…」
真っ赤に染まった顔を歪めて、甘い声を零しながらやだと拒否をして、くりくりのビー玉みたいなブラウンの瞳に涙を浮かべる蜜。
…ぶっちゃけ俺を煽ってるとしか思えない。
つーかね?やだとか言われてやめてやるような生易しい性格してないよ?俺。
なーんて、言ってみるけど。
真っ赤な頬に一筋涙が流れた瞬間、そんな格好つけたことを言っている場合ではなくなってしまうのだ。