蜜の言葉に返事はしない。うんわかったなんて従ってやるつもりもない。
そもそもそんなこと言われたって、はっきりと蜜から俺のことをどう思ってるのか聞くまでしつこくとどまるつもりだった。
ああ、でもいざ目の前にして言われると、すっげぇ胸にくる。どうしていいかわかんねぇ。
蜜を見下ろしながら黙り込む俺に蜜はもう一度震えた声で同じセリフを繰り返した。帰って、と。
二回目のそれに、俺の中のなにかがプチッと音を立てて切れたような気がして。
「ふっ、っんぁ、ん、やぁ…!」
蜜が頑張って俺を帰そうと閉めていたドアの中。壁にドン…ッと蜜を押しつけて、両腕を頭の上で束ねながら蜜の唇に貪りついてる俺がいた。
どうやって入ったかなんて正直覚えてない。泣きながら俺を睨む蜜の手を掴んで無理矢理、といったところだろう。
今の俺に平常心とか優しさとか、そんなものは一切ない。
ただあるのは、蜜を離したくない誰にも渡したくない好きだ愛してるなんて、蜜に対する欲ばかり。
無理矢理なこのキスも、蜜と気持ちが通じ合ってなきゃ、俺の一方的なキスじゃただ虚しいだけだって、そんなことわかってるけど。
でもさっきのたった四文字の言葉で蜜の気持ちがわかってしまったような気がして、俺はそうじゃないのにって、抑えられなかった。
「――泣くな蜜」