そう、ここに来たときに入れた喝よりももっと強く入れた俺はギリッと奥歯を噛み締める。
噛み締めて、足は痛いけど根性で耐えて、力の入ってなかった手にガッと力を入れる。
と、ググググ…ッ、ってめり込んでいたドアもそこで止まる。
所詮、蜜の力は女の力。ちょっと力を入れれば男の俺の力に抵抗できなくなってしまう。
俺の手に力が入ったことに気づいた蜜は何回かドアを引いてみるけどてんでびくともしなくて、ムカついたのかキッと俺を睨み付けてきた。
その、瞳が。涙に濡れて潤んでいるから睨み付けてきた、なんて言ったけど、そこに迫力というものは微塵もない。
逆に俺の心臓を跳ねさせるには十分すぎる可愛さで。
「か、かわ…っ、」
「――って」
「…え?」
「…っか、えって…!」
思わず心の底から思ったことが口から出てしまったけど、最後までは言えず。
それを遮って、上から見下ろす蜜が薄く口を開いてなにか言ったのを聞き取れずにデレデレまぬけ面で聞き返した俺は、返ってきた返事に一瞬で表情がらり。
そんなこと言って、ぽろぽろ涙を落としながら俺を見つめてくる(本人は睨み付けているつもりだろうけど)蜜はやっぱりどこの誰よりも可愛い。
だから、俺は――。