その蜜の力で今まさに閉まろうとしているドアにすかさず手を掛け、隙間に足を滑り込ませた俺。

だけど手、よりも足の方が先に出てしまい、勢いよく閉まりかけていたドアがあたり、ガンッ!なんて鈍い音と激痛が足に走る。


い…っ、てぇー!!!

なーんて、声に出して叫びたいぐらいにはかなり痛い。でも、俺は男。しかも目の前には世界一好きな女。そんな情けないことできるわけがない。

――ただし、涙目ではある。どっちにしろ情けないには変わりない俺である。まる。


つ、つーか…っ!


「み、蜜さんちょ、ちょっと待って痛い。痛いから嘘じゃないから痛い!」


ググググ…ッ。痛みでドアを持つ手に力が入らず、そこを突いて蜜が容赦なく(たぶん全力で)ドアを閉めようとしてくる。

そうなると餌食になるのが俺の足。靴越しだとしてもドアがめり込んで、もう情けないとか格好つけてる場合じゃない。

痛い、本当に痛いってば!蜜さんさ、俺のこともう好きじゃないからってこの仕打ちはあんまりじゃないのでは…?


「っ、」


瞳に溜まる涙が量を増す。あー、くそっ。〝俺のこと好きじゃない〟とか思うんじゃなかった。

思っただけでも泣きそうになるなんて、本当に情けない俺。そこまで弱ってんな、ボケ。別に情けない男チャンピオンなんか狙ってねぇだろうが。

ちゃんと蜜の口から返事を聞くまでは、まだ終わりじゃねぇだろ。

だからうじうじ、また女々しくなんな!