そして俺は桜子ちゃんと別れて学校を出たあと、蜜に今すぐ会いたいって気持ちに急かされるように足早に蜜が住むマンションまで歩いた。

学校から徒歩20分かかる距離を10分で来たからね。途中信号無視しかけて車にクラクション鳴らされたけどさ。

あっぶね。幽霊の姿で蜜に会うとこだった。


そうやって事故りかけながらもマンションに着いて、エレベーターで蜜ん家の階まで上がって。目的の場所に着いたらインターホンを躊躇なく押す。

ピンポーンと軽快な音が鳴り、…うっわぁ。どうしよ、蜜出てくれっかな…?なーんて、押したあとにまた女々しさ復活。

…って、おい!バカか俺。覚悟決めたんだろうが。いちいち女々しいこと考えてんなっ。いける、大丈夫。絶対出てくる!


と、自分で自分に喝を入れなきゃすぐ女々しくなっちまう(ここまできたらもう認める)俺がドキドキなんて柄にもなく緊張して、ゴクリ、固唾を呑んだ瞬間。


「――はーい。どちら様です…か…、っ!」

「…あ、ちょ、おい…っ!!」


こ、いつ…!

ちょ、待て待て待て。こんな展開予想してなかったっつーの!ふざけんなコラ!


蜜は誰が来たのか確かめなかったのか、未確認の訪問者へと向ける定形文を言いながらドアを開けた。

その開いたドアから今すぐに見たかった宇宙一可愛い(絶対に)蜜の顔が完全に見える、と。

訪問者が俺だと今さら気づいた蜜は驚いたようにもとからでかい目をさらにギョッとでかくし、それから僅か2秒後。

――ドアを閉めてきた。