「(…そうだよ、な)」


俺は蜜が好き。彩名蜜っていう女が世界一好きなんだ。もう蜜に愛想尽かされてんじゃないかとかぐだぐだ女々しく言うのはやめた。

男なら男らしく考えるよりも先に行動。当たって砕けろ、だ。って、あれ。使い方あってんのこれ?砕けたらダメなんじゃねぇのか?

…まあいいや。そんなこと。


とにかく!俺は決めた。これから先もずっと死ぬまで蜜と一緒にいたいから、今から蜜に会いに行って、話し合って。

そこで最悪な結果になったとしても、俺は蜜に伝える。言う。それでも好きだと。絶対諦めない、と。しぶてぇんだ、俺。悪ぃな。


「蜜のとこに――、」

「うん。今から行くよ」


待っていた桜子ちゃんのセリフは全部を聞かなくてもなにを言うのか容易く想像できた。

だから最初の方を聞いてすぐ、セリフを遮ってきっぱりそう言った俺に桜子ちゃんは少し目を丸くする。

さっきまでのうじうじ沈み加減はどうした、といった感じだろうか。わ、意外とわかりやすいかも桜子ちゃんって。


目を丸くした桜子ちゃんは、今度は目を細めて柔らかく、大人っぽい表情で笑う。

そうですか、と。

俺も頷いてから笑った。偽物じゃない、自然と浮かぶ笑顔で。